東淀川区東中島、新大阪駅近くのテラ行政書士事務所です。行政書士試験がいよいよ直前に近づいてまいりました。合格の鍵となる科目の民法において、総則に続いて受験生の壁となるのが「物権」分野です。
物権は「物に対する直接的な支配権」を扱うため、当事者間だけでなく第三者を交えた権利関係の優劣(対抗問題)が頻繁に出題されます。今回は、本試験で繰り返し出題され、かつ受験生が迷いやすい「物権の重要論点」を3つ厳選して解説します。
論点1:不動産物権変動と「背信的悪意者」(民法177条)
不動産の二重譲渡があった場合、所有権を主張するためには原則として「登記」が必要です。ここで頻出するのが、登記がないことを主張できない「第三者」の範囲です。
- 単なる悪意者は「第三者」に含まれる:AがBに土地を売り、その事実を知っているCがAから同じ土地を買って先に登記を備えた場合、CはBに対して所有権を主張できます。自由競争の観点から、単に知っていただけの悪意者は保護(登記による優劣の判定)の対象になります。
- 背信的悪意者は「第三者」から排除される:一方で、Cが「Bに高値で売りつけてやろう」などの信義則に反する悪質な目的(背信的悪意)を持っていた場合、Cは登記がなくてもBからの所有権主張を拒めません。判例上、背信的悪意者は177条の「第三者」に該当しないとされているためです。
- 転得者の扱い:背信的悪意者からさらに土地を買い受けた転得者が「善意」であった場合、その転得者は登記を備えれば所有権を主張できます。背信的悪意者が介在していても、絶対的に無効となるわけではない点に注意が必要です。
論点2:即時取得と「占有改定」(民法192条)
他人の動産を、有効な取引によって平穏・公然・善意・無過失で譲り受けた場合、即時にその所有権を取得できるのが「即時取得」です。ここで必ず問われるのが、引渡しの方法(占有の移転方法)です。
- 要件となる「引渡し」の種類:現実の引渡し、簡易の引渡し、指図による占有移転による即時取得は成立します。
- 「占有改定」による即時取得は成立しない:AがBに時計を売った後も「かりにBの時計としてAが預かる」という占有改定による引渡しを行った場合、判例は即時取得の成立を否定しています。外観上、占有状態に全く変化がなく、真の権利者を犠牲にしてまで保護する必要性が薄いためです。本試験では「引渡しの方法は問わない」といったひっかけの選択肢で頻出します。
論点3:抵当権の「物上代位」と差押えのタイミング(民法304条)
抵当権の目的物が滅失・損傷したり、賃貸に出されたりして、設定者(債務者)が金銭などを受け取る権利を得た場合、抵当権者はその金銭等に対して権利を行使できます。これが物上代位です。
- 「払渡し又は引渡し」前の差押えが必要:物上代位を行使するには、保険金や賃料が債務者に支払われる「前」に、抵当権者自らが差し押さえる必要があります。支払われて債務者の一般財産に混ざってしまうと、特定性を失うためです。
- 一般債権者の差押えとの優劣:債務者の「一般債権者」が先に賃料債権などを差し押さえた場合でも、抵当権者はその配当要求の終期までであれば、物上代位権を行使して優先弁済を受けることができます(判例)。「差押えは抵当権者自らがしなければならないが、一般債権者の差押えに遅れても優先権は失われない」という結論のプロセスを整理しておきましょう。
物権は、判例の結論とその理由(なぜその結論になるのか)をセットで押さえることが合格への最短ルートです。複雑な事案は、必ず余白に当事者の関係図と登記の有無を書き出し、視覚的に整理してから解答するようにしてください。
行政書士試験合格を目指す皆さまの努力が、実を結ぶことを応援しております。
